1998年6月9日訪問..学校の正面は交通量が多いことで知られる「環八通り」だが、校門の周りを囲む木々で騒音は気にならない。調布中学校は、1926年(昭和2年)に創立された学校であるが、私立学校としては珍しく宗教法人や財団などが設立母体になっていない。また併設短大を持っているが付属校のカラーは全く見られず、近年は早・慶・上智など私立難関・上位大学への合格実績を伸ぱしてきた学校として知られている。特に東京城南地区や神奈川東部地区では評価が高い。学校長西村弘子先生、総務部長杉森先生にインタビューした。
ほくしん教務統括 中山秋子
(中山)
建学の精神『捨我精進』とはどのようなことなのでしょうか。理解するには難しい表現だと思いますが。
(西村先生)
自分勝手な考え方、周囲に甘える気持ちを捨て、自分が決めた将来の目標に向かって、そしてまわりの人々と一緒に幸せを分かち合えるように努力し続ける生き方、を示していると考えています。
生徒たちには、昨今の環境問題も結局自分勝手な考え方や甘え心が引き起こしたものではないかと話しています。これからの社会を生きる上での指針として、この『捨我精進』がさらに重要になると思っています。
(中山)
この『捨我精進』の精神は、指導の場でどのような形で実践されているのでしょうか。
(西村先生)
これは女性としての自立や他者との調和をも意味した言葉であると考え、単にお題目としてではなく、実際の場で自分で考えて行動し何かをつかみとる経験を重視しています。
とかく、学校では「してはいけない」という傾向が強いが、調布では「やってごらんなさい」と生徒に勧め、自分で考え行動させようとしています。
結果が良くても悪くても、得るものは大きいと思います。
3つの心(強い心、思いやりの心、素直な心)を育むことができ、これか将来の自立や調和につながると考えています。
体験学習としてのファームステイ(農場滞在)や修学旅行の場でも、課題を自分で発見して解決させるという学習を体験させています。
もちろん、日々の学校生活の中でも取り組む機会を設けるように、担当教師などスタッフが取り組んでいます。
(中山)
進学校として実績を上げて、受験生や保護者の関心も高くなってきていますが、カリキュラムなど教科指導の面ではどのような特色があるのでしょうか。
(西村先生)
進学校という一括りの表現は少し抵抗がありますが(笑い)、6か年一貫教育を3つの時期に分けて、それぞれの基本の方針に基づき指導しています。
他校とは異なり、①中1、②中2~高1、③高2・高3と分けています。
①では、捨我精進を基にする調布の指導になじむための基礎づくりの時期で、この期が特に重要です。まず、精進日誌という生活記録をつけさせています。書くことが精進であり、書くために生活を振り返ることが精進だと考えています。また、礼法の時間などを通じて、自分と他者との関係を学ぱせます。そのような中で友達をつくり、自分自身を見つめさせます。学習面では、結果だけにとらわれずに、プロセスを重視する姿勢を持たせ、考えることが楽しい、ということを学ぱせています。
②では、前に述べた体験学習などを通じて、3つの心を育て、目的意識を持たせます。単純な教科学習に留まらず、自分がやっていることが世の中とどのように関わっているのかを学びます。生徒どうしが刺激しあい、教師も巻き込むほどエネルギーが生れていきます。
③では、他校と同様に受験に向けでの演習訓練が中心になります。
選択を増やし、志望校にそう受験指導をしています。前2期の成果から、将来の希望が明確で目標に向けて努力する生徒が多くいます。
入試が終ると、校長室に卒業生全員が集って話をするのですがが、その際に生徒はいっぱしの話をします。それを聞いて他の生徒も刺激を受けます。
また、調布に入学して良かったなあと思ってくれていると、私も励みになります。
(杉森先生)
この卒業生を集めて話をするのは西村校長が始めたことで、生徒の中に校長が率先して入っていくことで、他の教職員の刺激にもなり、学校全体の活生化につながってると思います。
学校の設備については必要最低限のものしかありませんが、生徒が気軽に教師に話し掛けられるという、生徒と教師との距離の近さがこの学校の特色です。また、常に情報をオープンにすることも心掛けています。
(西村
先生)
卒業のおりにはスキンシップを、と生徒に働きかけています。遠慮がちにちょっと触る子、しっかり抱擁する子、様々です。生徒たちのはじける若々しさや感性を実感できて、楽しい。(笑)
(中山)
最後に、受験を希望する生徒や保護者に望むことはなんでしょうか。
(西村先生)
調布の実際の姿を見て、生徒のありようや活気を見てほしいと思います。そしで自分がやりたいことを思い描いて入学してほしいと思います。
受験のためだけの付け焼き刃の力は要りません。調布は宿題が多いことで有名ですが、勉強も生活もやっていく中で身につき育っていくのです。社会への目が開けていくきっかけにもなります。そのことは理解しておいてほしいですね。
(杉森先生)
入試問題は奇をてらったものや極端な難問は出しません。
社会科の融合問題も、日常の出来事に関心を持ってほしい、というのが出題の意図ですから、新聞やTVのニュースに目を通しておいてほしいのです。
以上

(学校風景1学校風景2学校風景3)

☆付記☆取材終了後、西村校長に玄関まで送られる。校長の話のとおり、設備の面では最新のインテリジェント校舎などを持つ他校に譲る。しかし、西村校長、杉森部長の明るい、伸ぴやかな応対は、訪れるものに希望を抱かせ、指導力というソフトの面の充実を感じさせる。
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