1999年6月17日(木)訪問:今回の訪問先は共立女子中学校。共立女子中学校・高等学校は併設の大学・短大を持ちながらも、他大学を目指す生徒が多い学校として知られている。早い時期から他大の受験が多い付属校いわゆる「半付属校」として注目されてきた。99年度入試からA、B2回募集、Bのみ2科・4科選択になり、2000年からA入試も2科、4科選択になる。この結果、ますます他大の受験が増えると思われる。学校長沢辺宇一先生、教頭蟹谷栄一先生にインタビューした。
ほくしん教務統括 中山秋子

「中学では豊かな土壌づくりをする」

(中山)
共立女子は付属校ですが、進学校としても高い評価を受けています。教 科指導にはどのような特色がありますか。
(沢辺先生)
先取り学習はほとんどしていません。 国語を例にすれば古文、文法など独自の教材を使用して指導しています。また、3年間で3冊書取り練習帳を仕上げ、年に何度か書取り試験をします。8割の合格点が取れるまで何度も (笑)やります。 他には読書。毎月1冊、夏休みには3冊です。夏休み中には感想文を書いて、それを担当教師に送るんですよ。教師は夏休み中に読んで秋には感想文コ ンクールを実施します。
(中山)
なかなか大変ですね。
(沢辺先生)
そうですね。書くことの指導は大切ですからね。 作文など私よりよほど上手な生徒もいます(笑)。 中学では豊かな土壌づくりをすることを最大の目的だと考えていますよ。英語では、週1回の英会話の時間を利用して、教科書 の内容に合わせて英語を使えるように指導していきます。ネイティブと英語科教師が打ち合わせの上で2人で授業をするんですよ。
(蟹谷先生)
外国人は考え方がドライなので、打ち合わせの時間も給料を支払わ なくてはなりません(笑)が、その分非常に熱心にやっていますね。
(沢辺先生)
ネイティブとの話の中で簡単な英語で表現する力を身につけてくれることを願っています。外国人が来る度に、生徒が下手な英語でもどんどん話し掛けているのを見ると、うまくいっているように思われますね。
(蟹谷先生)
理科では実験・観察を増やしています。数学では高校の2次関数の一部を中学3年で採り入れて授業をしています。数学の教師のうち2人は、文部省の数学教育の研究会のメンバーで、興味・関心を持たせることに異常な(笑) 位の努力を払っていますよ。
(沢辺先生)
高校で理科系に3割の生徒が進むのを見ると、その結果が出ているのではないでしょうか。関心を持てば自分でやっていけるでしょうね。学習意欲 が何よりも大切だと思うので、単純な先取り学習は疑問ですね。

「社会に出ても役に立つ土台づくりをする」

(中山)
共立女子は1学年が約400人という、女子校としてはかなり大規模な学校ですが、いじめなどの不安はないのでしょうか。
(沢辺先生)
いじめはまずないでしょう。1クラス48名もいますので、小学校よりずっと多くて最初は圧倒される生徒もいるようです。でも、人数が多いことでかえって友だちができやすいのが良いと思います。
(蟹谷先生)
もうひとつはシステムの面で配慮しています。まず、一貫とは言い ながらも中学・高校の校舎や教員を別々にしています。また、生徒会活動やそれと関連するクラブ活動も別々です。中学生だけで自主的なまとまりが生まれるこ と、高校に入ると気分を一新できることなどが利点です。
(中山)
共立女子の生徒は明るいという評価があるのは、いろいろな努力がなさ れた結果なのでしょうね。
(蟹谷先生)
とても明るいですね。お行儀が悪い(笑)ほどにね。
(中山)
教科指導の面以外の共立女子の特色は何でしょうか。
(沢辺先生)
情操教育でしょう。共立講堂を利用して、映画、演劇、音楽などの鑑賞会を開いています。映画「タイタニック」を上映したり、ウィ―ン少年合唱団を招いたりなど、盛りだくさんですね。また、近代美術館に中学生に分かりやすい展示があれば出かけたりもします。もう一つはクラブ活動が盛んなことでしょう。太極拳部など他では見られないものもありますよ。
(蟹谷先生)
他には隔週の礼法の授業も特色でしょう。やんちゃ娘(笑)ばかりですが、いろいろな儀式などでは、きちんとしたお辞儀もできるし、私語もしない。私たちは当然のことと思うのだけれども、外部からいらした方々にとっては本当にびっくりされることらしいですね。
(沢辺先生)
そうそう、大学の入学式でもうちの中学、高校の生徒は他校の出身者とお辞儀のしかたで区別がつきますよ(笑)。学校を卒業して企業に入っても最初はお辞儀からでしょう。うちの卒業生は評判がいいですよ。同僚の前で「お手本にしなさい」と評価されるそうですよ。

「進路の自由と安定がなければ学校は成り立たない」

(中山)
共立中学・高校は他大学への進学者が多いことで知られていますが、こ れはどのようなお考えからでしょうか。
(沢辺先生)
自分の希望を実現するために幅広い進路が選択できるようにするのが目的です。 共立女子大の学部、学科だけでは、生徒のニーズが多様化している状況には対応にはできませんからね。 ただ、他大の受験をしても共立女子大の受験の際は優遇する制度もあります。共立女子大や短大への合格者はほとんどがこの制度を利用しています。進路の自由と安定ががなければ学校は成り立たないと 思いますね。
(中山)
大学からの反対はなかったのですか。
(沢辺先生)
この進路の自由と安定が確立したのは、先々代の竹松貞雄校長の時です。特に大学からの反対があったとは聞いていませんね。共立女子大の場合、女子大の中では珍しく全国から入学者が来ていましたから、学園も「生徒が来なくなる」という心配をしなかったと思います。
(中山)
現在、高校卒業生の他大学への進学はどのくらいですか。
(沢辺先生)
約7割で、共立女子大への進学は約2割ですね。25年くらい前とちょうど逆転しています。中学の入学者に希望調査をしてもはっきり他大へ進む (笑)と答えますからね。

「A入試では2教科の受験生が不利にならないようにする」

(中山)
99年度から2科、4科選択のB入試を始められたわけですが、結果はいかがだったのでしょうか。
(沢辺先生)
以前から4教科を勉強してきた生徒も数多く入学していますが、入学後の伸びも大きいようです。実際に入試結果を見ると、4教科生の学力は予想以上に高いようです。理科、社会の平均点はかなり高くて驚きましたね。
(中山)
共立女子が第1志望の生徒は2教科受験生も多いと思いますが、2教科受験生は不利になるのではないのですか。
(沢辺先生)
共立は2教科生の目標校になっていることも考えて、特に2月2日のA入試では2教科受験生が不利にならないように考えています。
2月3日のB入試では、全員を2科で判定して合格者を決め、その後で4教科受験生からさら に合格者を決める形をとりました。しかし、A入試では2科、4科の受験者数の比率に応じて合格者を別々に決めるつもりでいます。

以上

学校風景1学校風景2学校風景3

☆付記☆沢辺校長の落ちついた語り方が印象的だった。学校の指導システムに対して大きな自信を持たれていることが感じられる。特に情操教育については自信があるようだ。また、蟹谷教頭以下、指導スタッフの熱心さは高く評価されており、保護者からの信頼の元になっている。
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