「生徒のことを知り尽くして卒業させる学校を目指す」
(中山)
2000年から新しい体制がスタートする立教池袋中学校は、どのような考えから計画されたのですか。
(中島先生)
中学、高校の新体制は立教学院全体として、
「21世紀の教育はどうあるべきか」、
特に「立教が果たさなくてはならない教育使命とは何か」
とい うことを考えて改革を始めました。
その答えが池袋と新座に別々の中学校、高等学校をつくるということだったのです。
その改革の中で池袋中学・高校は小さく スリムな学校として、教師と生徒が密着した学校、生徒のことを知り尽くして卒業させる学校をにしようと考えています。
(中山)
池袋中学・高校と新座中学・高校では教育内容の面での大きな違いはでるのでしょうか。
(中島先生)
創立以来の
「キリスト教に基づく人格の形成を目的とする」
という教育の方針や理念は変わりません。
良い例えかどうか分かりませんが、慶應義塾はいくつかの中学や高等学校を持っていても基本の教育方針は変わらないように。
ただ、池袋と新座とでは学校の規模が違うので自然と違いも生じると思います。
(中山)
具体的にはどのようなことでしょうか。
(中島先生)
池袋は各学年3クラスで、新座は中学5クラス、高校7クラスにな
ります。
生徒数が違うだけでなくグランドなど校地の広さや設備にも違いがあります。特にクラブ活動の面で影響が大きいと思います。クラブの数は新座の方が多くなるでしょう。
他には他大学受験についての対応に違いが生じるでしょう。
「立教のような人間教育をする学校からの東大入学」
(中山)
池袋の高校からは他大学の受験が難しくなるということですか。
(中島先生)
新座の高校では、東大などを狙う生徒や立教大学へ進めない生徒の指導が必要でした。
そのため他大学受験の実績やノウハウがあるので、最初から他大学を考えるというのであれば、新座の方がよいかもしれません。池袋からはまだ卒業生を出していませんからね(笑)。ただ、他大学を受験することも大いにあっていいと思いますよ。
17・18歳の頃は自分の進路についても哲学的に考える時期なので、いろいろな進路を考える中で他大学の受験も出てくるのも当然でしょう。
(中山)
どのような体制で他大学を志望する生徒に対応される予定ですか。
(中島先生)
受験クラスを作ったり、授業内で大学受験に向けた「傾向と対策」的な授業をやったりするつもりはありません。授業以外で予備校と連携して希望に応えることなどは考えています。
すべてキリスト教に基づく人間教育を基本にした展開の中で考えていきたいと思っています。実際、立教高校から東大に進学する生徒には、この人間教育を受けてきた立教小学校・中学校の出身者が多いのです。
(中山)
それはどのような点で人間教育と関係しているのでしょうか。
(中島先生)
小学校や中学校で入学してきた生徒のほうが許容量が大きいのかも
しれませんが、 12年・9年と立教で教育を受けていくうちに、学歴社会の物差
しだけでなく、自分がやりたいことを追求するために「東大がいい」という学校選択をするということです。
私自身、受験勉強をしてきた経験や生徒を指導をしてきた経験から考えても、うちのような人間教育をする学校から東大に入るのがとてもいいんじゃないかなと思いますね。
池袋では、このように考えて進路指導、 いや人生指導を進めていきたいと思っています。
「基礎学習力を育てる」
(中山)
池袋で進められようとしているキリスト教に基づく人間教育ということ
について、もう少し詳しくお話しください。
(中島先生)
教育現場では2つの目標を掲げて取り組んでいます。
1つは「テー マをもって真理を探求する力を育てる」、
もう1つは「共に生きる力を育てる」
というものです。多様な個性を身につけて、その個性を自己推薦できる能力をも
った子どもたちに育て上げたいと思っています。
(中山)
そのためにどのような取り組みをされていますか。
(中島先生)
レポートや論文を書く機会を数多く設けようと考えています。文章をまとめ上げることは、豊かで的確な日本語を使う能力を伸ばしていく指導だと思います。また、ネイティブ教師の授業を採り入れて生きた英語を使う能力も伸
ばしていきます。この2つの言語に関する基礎学力を徹底的に鍛えます。
でも、 それだけでは意味がありません。この2つの学力を強化する課程で、自分自身で目標を立て手順を考え、実践していく力、立教で「基礎学習力」と呼んでいるも
のですが、これを育てることに意味があると思っています。
(中山)
「基礎学習力」を重視するというお話は初めて伺います。どういう事で
しょう?
(中島先生)
現在、大学では基礎学力が不足して困っているという話を聞きますが、基礎学力を伸ばそうとしても基礎学力はなかなか伸びるものじゃないと思います。だからこそ、立教では基礎学習力を育てたいと思うんです。
(中山)
最近の子どもたちはただ親の後をついていくだけ、自分で考え行動することできないといわれていますが、そういうことも基礎学力の不足になるのでし
ょうか。
(中島先生)
そういうことも一つです。
(中山)
では、どのような指導で基礎学習力を育てていらっしゃるのでしょう。
(中島先生)
たとえば、塾などでは見事なマニュアルにそって指導がなされますよね。 生徒はただそれにそって考えていけばよい事も多いでしょう。
でも、基礎学習力をつける育てるためには、それではいけない。
子どもたちに興味や関心を持たせる授業にしなくてはなりません。
立教では各先生は努力をしています。授業内でも作業させる、作品を制作させることが多いのです。
他には、学習マナ ーというか、人間としてのマナーも身につけさせたいと思っています。学習マナ
ーの悪い生徒には学習力など育ちにくいでしょうから。
(中山)
学習の場では、共通している大切なことだと思います。
「力をつけるために週5日制を採りたい」
(中山)
公立校では週5日制が導入されてから学力低下がさらに深刻になりまし
た。
立教はずいぶん前から週5日制を導入されていますが、そのような問題はないのでしょうか。
(中島先生)
週5日制を採用してもう20年ほどになります。
以前は文部省ににらまれて、最近では塾ににらまれて(笑)いますよ。
時間を有効に使って教えるべきものを教えることは可能です。そして、週5日制のゆとりを生かせば、自分でテーマを見つけ自分で課題を展開するテーマ学習、まさしく「基礎学習力」を
身につけるよい教育目標にそった学習も可能ですからね。
「立教では力をつける ために週5日を採っている」
と言えるように、さらに指導の研究を進めているところですよ。
(中山)
その研究はどの程度まで進んでいるのですか。
(中島先生)
「総合学習」時間の中で、一人ずつに1年間テーマを決めて自主研究をさせようと計画しています。具体的には、高3では卒業論文を出させることだけは決めています。1年ずつ状況を見ながら進めて行くことになるでしょう。
特に先生方のアプローチのしかたは重要になるでしょう。生徒が質問に来たとき
に、
「難しい質問だなあ。先生もわかんないや」(笑)
というような対応などができるならば、生徒もハッスルできるでしょう。質問にそのまま教えてばかりいたのでは頼ってしまってだめでしょうね。
(中山)
先生方も今が一番大変な時なんですね。
(中島先生)
授業の合間にたくさんの会議をして計画を立てています。教科指導の面だけでなく、生活指導や行事の面でもいろいろなアイデアが出てきますね。
みんな意欲的に、楽しんで、理想を述べて検討していますよ。
「まず全員を2科で判定し、その後に4科で判定する」
(中山)
最後に入試についてお聞きします。
2科・4科の受験での選抜方法はどのようになる予定ですか。
(中島先生)
いろいろな可能性を持った生徒に入学してがほしいと思います。
今のところ、全受験生から2科で70%の合格者を決め、30%は残りの4科受験生の中から合格者を決める予定です。
(中山)
試験科目や試験時間が変わります。問題はどのような方針で作られるのでしょうか。
(中島先生)
国語、算数は試験時間が短くなるので多少は基礎的な問題になるかなと思います。
傾向が大きく変わることはないでしょう。
社会、理科については現在検討中ですが、基礎的なことを中心に問いたいと思います。方針が決まった段階で模擬テスト問題を用意したり、出題の方針を知らせることも考えています。
(中山)
新しく社会、理科を出される学校は他校を意識されるのか、極端に難しいか、極端に易しいか、どちらかになることが多いのですが。
(中島先生)
問題に特色を出すのはなかなか難しいでしょう。
4、5年経てばだいたい同じような(笑)問題になってしまうんじゃないかな。
他校では時事的な問題を交えて特色を出そうとされているようですね。
あと、記述の問題は「疲れるから嫌だ」と評判悪いようですからね。
受験生が少ないと記述問題が多くてもいいんでしょうが、どうしても点数がはっきり分かる客観問題にしなくてはなら
ないでしょう。
ただし、入学後はレポートなどで記述力を鍛えたいと思います。
(中山)
これぞ立教池袋中学という問題を期待しています。
以上
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