1999年7月13日(火)訪問:日大二中・二高は日本大学の付属校(特別付属校:日本大学とは別の学校法人)ながら早くから他大受験の体制を採って進学校としても評価が高い。長い間、中学は男子校高校は男女別学校という体制を取ってきたが96年、中学、高校とも男女共学校として再スタートをした。その結果「高校に比べてかなり入りやすい」と言われた中学のレベルが大きく伸びた。中学入試での大学付属校の人気が下降している状況の中、今後が注目される付属校の一つである。学校長林俊雄先生、教頭高山裕二先生にインタビューした。
ほくしん教務統括 中山秋子

「共学になって生徒がよく勉強するようになった」

(中山)
男子校から共学校に変えられて4年目になりましたが、共学校に変えら れたのはどのようなお考えからだったのでしょうか。
(林先生)
共学校を目指した狙いは3つあるんですよね。 1つ目は、高校は別学だけれども、男子、女子両方いるのに、中学は男子だけというのは不自然なんです。そんな不自然さを解消したかったんです。 2つ目は社会的なニーズ、特に卒業生から女子を入れてほしいという強い要望があったこと、私立学校が相次いで共学化を進めていったということも関係していましたね。 3つ目は、学園を活性化したいということでした。
(中山)
「学園の活性化」というのはどのようなことでしょうか。
(林先生)
私立学校の場合、定年まで勤める教員が多く、他校などの人事交流も少ないわけです。 だから、節目節目で教員の意識変革が必要なんです。教員の意識が変わることで、さらに生徒は大きく変わっていきます。結果、校内がますます明るく生き生きとした状況になることを期待したんですよ。
(中山)
結果はいかがでしたか。
(林先生)
目的はほぼ達成されたと思いますね。 男子だけの学校には男子だけの良さもあったんですが、女子が入ってきたことによって、男子と女子が良い意味で意識し合うことで相互に啓発されているんじゃないかなと思います。
(中山)
相互に啓発し合うというのはいいですね。それは、スムースにできたのでしょうか。
(林先生)
正直言って中1や中2では女子の方が元気がいい、女子の勢力が強 いと言ってもいいくらい (笑)ですね。男子がやや圧倒されています(笑)。 女子の方が成長の時期が早いんで、中3くらいで、やっと男女が対等になったかなぁ(笑)という感じですね。勉強もよくやるようになったと思います。当てられて答えられないと恥ずかしいという思いもあるようですね。説明会の時にも言うんですが男子が女子を真似てノートをきれいに書くようになったり、きちんと 持ち物も整理するようになったりしたのには正直びっくりしますよ(笑)。各行事なども共学になって大きく変わりました。
(中山)
どんな風に変わったのでしょう。女子を新設すると大概、女子勢力が強くなると聞きますが。
(高山先生)
それは言えますね。ただ、林間学校での様子などをみると、共学1 期生だった今の高1の頃はまだ意識しすぎていたような気がしましたが、今年の中1は自然な感じでしたね。前は女子だけでやっていたことにも今年は男子が加わっていましたからね。まあ、女子の勢力が強いという点では、林間学校の実行委員なんてみんな女子なんですよね。行事の司会にも3日目になって「やっと 男子が出てきたか(笑)」というと感じですからね。

「2001年から入試を2科・4科の選択にする予定」

(中山)
現在、男女が1:1の割合ですね。 共学校の中でも女子の割合が大きい ような気もしますが。
(林先生)
共学を始めた頃は男女の割合を3:2で募集していました。 どころが女子の志願者が予想以上に多く、しかも学力が高い生徒が多かったので、女子の人数を増やして1:1に変更したんですよ。先ほど話した通り、共学校はどこも女子が勢いが強いようですが、何とか男子を強くしたいものだとも考えています。
(中山)
何か方策をお考えのようですね。
(林先生)
入試を2科・4科選択で実施しようと考えています。 男子の場合、レベルが高いと言われている学校はすべて4教科ですよね。 兄弟校の日大三中では今年(1999年)の2次から2科・4科の選択したところ、相当優秀な生徒が入学してきたので来年から3次を新設して同じように入試をすることに決まったと聞いています。 特に男子の場合、4教科を勉強した生徒が多いので、「強い男子が入ってくるのではないか」と思っています。やはり生徒会長には強いリー ダーシップを発揮してまわりをグイグイ引っ張って行けるような男子がなってほしいなあ(笑)と思っていますねから。男女が対等にやれる学校にしたいですね。
(中山)
いつから変更される予定ですか。
(高山先生)
まだ検討中なんですが一応、今の小5が受験する2001年には実施したいと考えています。
(林先生)
目論見どおりに行くかどうかは、やってみなくては分からないのです が、4教科の勉強をしてきた生徒が入学することには大いに期待しています。 小 6で、都立高入試レベルの社会は簡単に満点を取ってしまうらしいですからね。 頭の柔らかい時分に、いろいろなことに関心を持ってきた子は強いですね。
(中山)
中学受験の場合、現状の公立中学の内容と比べると格段に広く深い勉強 が必要なことは、受験生も保護者も早いうちに自覚します。もっとも、一度たいそうびっくりはします(笑)が。 さて、それでは、入試の変更に合わせて出題傾向も変わるのでしょうか。
(高山先生)
まだ、具体的には決まっていませんが、国語や算数は今の傾向が続 くと思います。毎年、説明会の席でかなり詳しく出題の方針などお話していますので、ぜひ説明会にお越しください。

「高1で文・理を決めるのは難しい」

(中山)
日大二中・二高に入学する生徒には、内部進学で日大を目指す生徒、高校から他大学の進学を希望する生徒の2通りがありますが、指導の上での特色はどのような点ですか。
(林先生)
日大へは4割ほどの進学者で、他は他大学を狙います。 でも、中学校の段階から大学受験を目指して準備をするような体制は取っていません。基礎、 基本を身につけさせる時期ですから。 意図的に極端な先取り学習はしていませんが、数学は中3の1学期で全内容を終え、2学期から高校の内容に入ったり、理科・英語では単元的に一緒にやる方が良いという単元などは高校内容を盛りこん だりすることはありますね。
(中山)
その場合、高校への進学後の指導はどのようになっていますか。
(林先生)
極端な先取りができないことにも関係があるのですが、二高では伝統的に内部進学者と他の中学出身者を一緒にしてしまうんですよ。高2ではA・B 2つのコースに分けるので、高1では分ける必要があまりありません。
(中山)
高2でのA,Bのコース分けは文系、理系という意味ですか。
(林先生)
まあそうなんですが、厳密なものではありません。Aは社会を2科目選択するコース、Bは理科を2科目選択するコースですが、他の教科はほとんど共通なんですよ。 高3で初めて完全に文・理のコースに分けるんです。
(中山)
高3からのコース分けでは遅くはないんですか。
(林先生)
以前、高2から完全に文・理のコース分けをした時期があったんですが、正直なところ失敗だったんですよ。高2から文・理のコース分けをすると、 高1の2学期の終わりには、遅くともどちらにするか決めなくてはならない。でも、高1の内容は中学の延長上で難度があまり高くないんです。特に理数系の科目は高2から急にレベルが上がるんで、理系のコースを選んだ生徒で「ついてい けない」というものが出てくるんです。 彼らは文系へのコース変更を希望しても高3まで待たなくてはならない、その1年から数ヶ月が本当に辛いと言うんです。 そこで今の方式にしたわけです。
(中山)
現在の方式に落ち着いたのはいつごろのことですか。
(高山先生)
だいたい15年前からですね。
(林先生)
その後変更していないのは、高2のBコースから高3の文系コースへ進む生徒が毎年5、60名いるからなんですよ。 考えてみると成功したシステム だと言えると思いますね。

「子どもたちに達成感を味わって欲しい」

(中山)
指導の上で、現在取り組んでいらっしゃることがありますか。
(林先生)
総合的に進路指導のあり方を見直さなくてはならないと考えています。 進路指導というと、進学指導という考え方をしてしまいがちです。でも、本来、人間としての生き方、在り方に関するものですから、学校だけでなく家庭の中で も考えてもらわなくては困るんです。 父母会の中に進路指導懇談会というものを設けて、どのようにとり組んでいくのかを検討し始めたところなんです。
(中山)
それは、どのような方針の下に進められようとしているのですか。
(林先生)
充実した生活、生きがいのある生活を何に求めるか、それを実現させるために大学や仕事があるわけでしょう。これから出発しないと、勉強する意義、大学で学ぶ意義、仕事をする意義、あらゆる意義が出てこないじゃないですか。 目先の大学進学を考えているだけじゃだめですね。学習意欲も目標があってこそ生まれるものですからね。まず、夢でもいいから何をやりたいかを考えさせるために、教師や先輩の話を聞いて、社会に関心を向けさせることをしたいものです。
(中山)
生徒に目標を持たせると言う点では、不登校の問題とも関連がありそう ですね。
(林先生)
そうですね。 教育、指導がうまくいくためには、生徒が「学校へ行くのが楽しい、嬉しい」と思ってくれることが必要ですからね。残念ながら、学年に1人か2人かの生徒が不登校になってしまいます。学校生活が原因の場合もあるのですが、本人の生育暦に問題があることも多いのです。集団になじめない、利己的な子どもや排他的な子どももいます。しかし、そのような子が二中をやめ公立中にかわっても問題は解決しません。私達は、入学させた生徒に最善を尽く します。
(中山)
どのような対応をされるのですか。
(林先生)
11年前からカウンセラーを置き、教師、保護者で共に考えます。 一人一人がかけがえのないものという視点をもって取り組んでいます。誉める、励 ます、時には厳しく叱ることもやっていきます。 「子どもを変えるにはまず母親から」 と母親のカウンセリングを徹底的に行うこともありますね。
(中山)
厳しくありませんか。
(林先生)
今の親は甘いんですよ。自分の言っていることが通らないと、怒る、 ふてくされる、自分中心で耐性がない。当然、子どももそうなるんです。 子どもに一つのことを我慢強く続けることの大切さを、終わった後の達成感や成就感を体験させて教えたいと思いますね。 山登りや遠泳などのハードな行事をやったり、宿泊所では自動販売機を止めて麦茶以外は飲ませなかったりするんですよ。
(高山先生)
今年の林間学校での登山では、昼食が2時過ぎなりましたが、空腹を我慢させました。途中でおにぎりを1個ほおばってはいましたが。
(林先生)
少し厳しい話ばかりしましたが、学校行事や学年行事が多いのも子ど もたちに達成感を味わって欲しいからなんですよ。 不登校の生徒にも、保健室や校長室での授業を経て卒業の機会を与えています。卒業後、夜間高校の卒業式に招待されたときは本当に嬉しく思いましたね。
(高山先生)
今年もそんな卒業生の一人が大学へ進んだと報告に来ましたね。私も感動しました。

以上

学校風景1学校風景2学校風景3

☆付記☆受付に向かうと、林校長自ら出迎えをいただいた。周囲の生徒が話し掛け、校長もそれに気さくに応対されていた。学校の雰囲気がとても明るい。校長の人柄のためだろう。二中出身のスタッフも多いそうだが、それだけで築かれたのではない、熱い息吹が溢れている。校長が話された「生徒が喜んで通ってくる温かみのある学校」の実現は近いようだ。
日大二URL