「人生の大半を決める少年期だから鍛錬が必要である」
(中山)
教育方針についてお聞きします。特に巣鴨中学校は武道が正課として採り入れられるなど、他校には例のない独自の教育が行われています。そのことについてもお話ください。
(堀内政三先生)
「少年期にどのように過ごしたかでその人生の大半が決まる」と認識しています。
この貴重な時期に勉学や武道などによる心身の鍛錬と礼儀作法の徹底に努めています。
これは通常の学校生活だけでなく、さまざまな学校行事の中で実践されています。詳しくは学校案内を見てほしいのですが、他校にはないような行事が数多くあります。特に身体の鍛錬につながる行事が特徴です。これらを通して、本当の「文武両道」を達成したいと考えています。
巣鴨では剣道や柔道を体育とは別に正課としています。これがあるから文武両道なんだと、世の中の人は考えるようです。そのような単純なものではありません。いろいろな機会を利用して身体を鍛錬したいのです。また、身体の鍛錬という刺激から、心も成長できるのです。そのような身体と精神のつながりを築き、「頭で良いことを考え出しそれを正しく身体で実行できるようになる」こと、それが本当の「文武両道」なのです。
(堀内不二夫先生)
これが学校案内です。校長が話した教育方針や巣鴨を特色づけるいろいろな行事の写真が載っています。受験生や保護者の方々にはぜひ読んでいただきたいものです。
「行事の中で家族とのつながりを知る」
(中山)
数多くの学校行事の中で、特に印象に残っていることがありましたら、お話ください。
(堀内政三先生)
特に印象に残っているのは、数年前の寒稽古の作文に中1の生徒が書いたことです。
寒稽古の4日め、少し雪が舞うような寒い日、風邪で体調を崩して行こうか行くまいか迷っていると、心配したお父さんが「駅まで車で送ってやろうか」とおっしゃったそうです。すると、それまで朝食の支度をされていたお母さんが、「ここでお父さんに送ってもらったら、今まで頑張ってきたことが無駄になるじゃないか」と叱られたそうです。それで、「自分は初めて、父親の優しさと母親の厳しさを知ることができた」と書いています。
これは、その生徒にとっては人生を決めるような経験になったはずです。
また、今年の卒業生で東大へ現役合格した生徒のうち、はるばる伊勢崎から通ってくる生徒がいました。この生徒は6年間1日も休まず通学しました。それだけでなく寒稽古も、受験間際で自由参加の高3まで6年間皆勤しました。寒稽古は、朝6時30分の開始ですから、その時刻に合せて登校するのは大変なはずです。始発電車ではとても間に合わないので、ご両親が高崎まで車で送り、そこから始発電車でやってきました。これはすごいことですね(笑)。遠距離通学が多い巣鴨でも特にすごい例です。ご家庭の理解と信頼がなくてはとてもできません。
(堀内不二夫先生)
生徒の作文をまとめたものがこれです。今度行われる寒稽古で1サイクルが完了します。全部を読み通すと、生徒が成長していくさまが分かります。
「本当の道徳教育は、他人との交わりの中でしかできない」
(堀内政三先生)
最近、少年の犯罪の増加が問題となって、いわゆる「心の教育」が叫ばれています。このような状況は、大切な幼年期から少年期の道徳教育を、学校の授業の中だけでやろうなどと考えたところに原因があるのです。
子供と大人との差は単に経験と知識の差で、基本となる精神は変わらないはずです。教師からの授業あるいは教科書で押し付けられるものではなく、心の教育、本当の道徳教育は、仲間どうしの交わりの中で行われるものです。ですから学校はその機会を提供することを努力すべきです。
巣鴨は行事の中でその機会を設けようとしています。仲間との交わりの中で、自分と他人との違いを知ることで、自分を見つめ他人への尊敬やいたわりの気持ちを、自然に身につけていけるでしょう。大菩薩峠越えの強歩大会、巣園流水泳学校などはその機会と位置づけています。巣鴨の生徒は皆元気いっぱいですよ。
「相対評価は生徒の努力を反映しない」
(中山)
具体的な教科指導の面での特色をお話しください。
(堀内政三先生)
永年の経験から、成績評価において相対評価ではなく100点満点の絶対評価を採用しています。
相対評価では、生徒が素晴らしい頑張りを見せたとしても、同じ評価のままであることも多くなるはずです。それでは生徒の意欲や教師への信頼も無くなってしまいます。
厳密なレベル設定をした試験での得点をそのまま評価とします。それを1枚の成績表に記載し、3年間の成績の変化がはっきりわかるようなっています。授業に臨む姿勢や課題への努力の評価などは、教師が教室内で行えば良いのです。
巣鴨の試験で満点近い得点ができれば、どこの大学でも大手を振って入れることを意味しますから、生徒の目標としても格好のものでしょう。
また、試験のみの評価というのは、最終的に大学入試という一発勝負の時にも、持っている力を発揮できるトレーニングとしても有効だと考えています。
「生徒のレベルに応じたカリキュラムで指導することが重要」
(堀内政三先生)
カリキュラムとは生徒が理解力のレベルに応じて考えるものです。全員が理解できる最低限のものを作成して、余裕がある生徒には高いレベルの指導をすれば良い。
しかし、長い間、これは「差別だから」とタブー視されて来ました。ですから、今までは生徒のレベルを全く考えないで指導要領が作成されてきたのです。新しい指導要領は、生徒のレベルに合せなくては、ということに気づいた結果ようやく作られたものでしょう。
巣鴨のようにハイレベルの生徒が集まる学校では、ハイレベルなカリキュラムを作成し指導します。詳しくは学校案内を見てほしいのですが、中・高6年間の内容を5年間で指導します。理科や社会では、生徒の理解レベルに応じて反復する「らせん状階段方式」を採っています。中1で指導された内容が次には高いレベルで指導されるわけです。その他に、各教科で巣鴨独自のカリキュラムが作成され効果を上げています。
「試験問題には小学生に理解できることばを吟味して使っている」
(中山)
巣鴨中の入試問題は難問という定評があります。作問の意図と特徴をお話ください。
(堀内政三先生)
受験生のレベルが高く、ボーダーライン付近に受験生が集中します。1点が合否を分けるわけですから、その1点に見合う価値を持つ問題を出すというのが、作問の基本方針です。
本当の実力を1点刻みで見るには小学校の内容を単純に出題したのでは間に合いません。小学校での指導内容から、いろいろな事柄を総合した形で出題します。ただ小学校の授業では総合化した問題は扱いませんから、「指導要領から逸脱している」などという的外れな批判があるのです。
さらに、問題文の作成でも、誤解が生じるような表現は避けています。各教科担当が問題をつくる段階では、小学生がわからないような言い回しもあります。大人の目で見ると簡単に分かる表現でも、小学生には難しいものもあります。それを私自身でチェックして修正するようにしています。これも入試できちんと実力を見るためです。
「巣鴨を気に入った者に受験してほしい」
(中山)
最後に巣鴨を受験したいと考える生徒ならびに保護者に望むことをお話ください。
(堀内政三先生)
まずは、説明会に来てください。そして、学校案内を見てください。巣鴨の教育はそこで実感できるはずです。
巣鴨は学費プラス100円の教育は行えると自負していますが、皆さんの眼で他校の教育と比較してしてください。その上で巣鴨が気に入った時は受験してください。
以上
学校風景1、学校風景2、学校風景3