1998年11月6日(金)訪問:今回の訪問校は豊島岡女子学園である。2月2日に入試日を設定して以来、桜蔭、女子学院などの併願校として着実にレベルアップを果たしてきた。主に東京北部から埼玉にかけての、学力上位の受験生を集め、「入学者の学力レベルは桜蔭、女子学院に次ぐレベルになっている」という評価さえ出てきている。さらに平成11年度入試から完全4教科入試に移行し、今後の展開が注目されている。学校長二木友吉先生に、インタビューを行った。
ほくしん教務統括 中山秋子

「急速にレベルアップしたわけではない」

(中山)
近年の大学合格実績は実に素晴らしく、受験生やその保護者の間では桜蔭や女子学院などトップ校に次ぐ評価をされています。また、理科系に強い進学校としても人気があります。それについてどのようにお考えなのか、お話ください。
(二木先生)
そのような評価は大変ありがたいことです。しかし、急に何か新しいことに取り組んでできるようなことではありません。
生徒にとっては行きたい学校に行くのが正しい姿です。しかたなく通っているのでは生徒にとって不幸です。本校に教員としてきたときに、明日から都立高校へ移る、という生徒がおり、顔を上げて私の顔を見ることができなった姿を見て、これではいけないと思いました。
そこで、公立高校が第一志望ならば、公立高校の合格発表後に手続きができるようにしたのです。その結果、都立高校の併願校として志願者が増え、資質の高い入学者が集まり始めました。あわせて、本校が行きたい学校になるためにと、教育過程や設備などを整え生徒の期待に応える楽しい学校にしようと努力してきました。
それが今日の評価につながっていると思います。 
また、理科系に強い進学校だという評価にしても、生徒の志望が変わってきていることを察知し、それに対応できる体制にすばやく移行することができた結果だと思います。

「かわいこちゃんになりなさいが口癖」

(中山)
校長先生は実際に授業をお持ちになっているとのことですが、その中で生徒に伝えたいとお考えのことは何でしょうか。
(二木先生)
高1の漢文の授業を全クラス担当しています。
校長というと、全校生徒を集めて壇上からお説教をする人(笑)というイメージがありますが、そんなことをしても何もならないでしょう。
生徒たちに「私もやってみるから君らもやってごらん」という姿勢で接することで、勤勉努力の重要性を感じさせることができるだろうと考えています。
そして、最大の願いは気立てのやさしい子、かわいらしい子を育てることです。根底にあるのは論語の中にある「恕」、つまり相手を思いやる心を育てたいという気持ちです。
中学生、高校生には難しい言葉では伝わらないので、「かわいこちゃんになりなさい」と言い続けているうちに口癖になって(笑)しまいました。ですから、中学生では「わたし、かわいこちゃんになります」と言ってくる生徒もいます。
また、この口癖は数年前に生徒が書いた漫画「豊ちゃん日記」の中でも出てきます。この漫画は、授業の時に見つけた紙切れにとても上手に漫画が書いてあったことから、私が「もっと書いてまとめてみないか」とすすめたことからでき上がったものです。
彼女は大学在学中にプロになるように誘われたほどの才能がありました。彼女に限らず、いろいろな面で才能のある生徒が数多くいます。
人にはすべて特性があり、それを伸ばしていくという「一能専念」という言葉があります。本校ではこの「一能専念」ができる場を作ってあげたいと思っています。そのため、クラブ活動が盛んで、他校に比べても文化祭でのクラブの発表が充実していると思います。
生徒も「この学校の特色は一能専念ですね」と言ってくれるので嬉しくなります。何かに熱中できる子は勉強でも優れています。きっと意識の切り替えが上手なのでしょう。ここ数年、クラブの部長が東大に合格しています。

「繰上げ合格を出すのは生徒にもマイナス」

(中山)
昨年から入試を3回に設定されていますが、今後どのような方針で入試を行われていく予定ですか。
(二木先生)
昨年は、従来2月1日に受験を行っていた女子学院などプロテスタント系の学校が2月2日に入試をしたために、併願のしやすさを考え3回の入試に変更しました。
今年は2回に戻すつもりだったのですが、第1志望者に受験の機会を増やすためにも変更しませんでした。2日入試の合格発表が遅く、3日の併願パターンが組めないという批判もありますが、合格発表者の選抜には時間がかかります。
メインの入試になる2日の合格発表者が多すぎると3日、4日の受験者に不利になります。また、少なすぎると今度は繰上げ合格者を出すことになります。繰上げ合格は学校の都合によるもので教育的な配慮に欠けると考えます。それで、手続き者の数を永年のデータをもとに予測しならがら合格発表をしています。
合否を待つ受験生の心情を思いますと、齟齬を生じないようにするためにどうしても時間が必要となり、当日発表は難しくなります。その点はぜひご理解くださいますように。

以上

学校風景1学校風景2学校風景3

☆付記☆池袋という街が持つ雑然としたイメージとは全く違う学校である。生徒の利便を熟考して設計された校舎は、学校を運営する校長の「教育者」としての姿勢が反映されて、明るく整然としている。生徒も明朗活発である。この環境が生徒を変えているのかもしれない。新築中の別棟校舎の完成を控え、新たな豊島岡女子学園中学校の展望が楽しみである。
豊島岡女子URL