「学校がやらなくてもいろいろなことが生徒の中で継承されていく」
(中山)
横浜共立にお伺いするのは2度目です。前回、相吉先生からいろいろとすばらしいお話を伺いました。今回も楽しみにして参りました。どうぞよろしくお願いいたします。
(石井先生)
こちらこそ。
(中山)
石井先生はこちらの校長職に就かれて2年めですね。長くプロテスタントの学校に関わってこられたと伺います。横浜共立ではどのようなお考えで教育にあたられていらっしゃいますか。
(石井先生)
よく言われることですが、変えないものと変えていかなくてはならないものがあります。変えてはならないものは本校の教育の理念です。キリスト教の基盤に立った教育と女子の教育を行うという点では変わりません。これがなくなると横浜共立の存在意義はありません。
(中山)
横浜共立の教育は長い伝統を持ち高く評価されています。
(石井先生)
ただ、時代もずいぶん新しくなってきていますし、激しく変動してもいます。
そのような動きに対応できる教育をつくっていくことが絶対に必要だろうと思います。
(中山)
どのような点が必要だとお思いですか。
(石井先生)
本校は高台にありますので、各方角にいろいろなものが見えます。たとえば、東を見ると日本と海外とを繋ぐ横浜港が見えます。まずは国際化に対応できる指導ということです。
(中山)
なるほど。それはどのような方針で進めていらっしゃるのですか。
(石井先生)
他の学校のように海外に姉妹校を持ち交流を深めるとか、海外へ修学旅行に出かけてみようとは考えていません。本校で長く考えてきた国際化というのは、人間を見る際に、国籍や性別や年齢や考え方や持ち物などで区別や差別を一切しないということにあります。生徒の中には日本という狭い枠を越えて仕事をする人間もきっと出てくるでしょう。その際にぜひ身につけておいて欲しいのは、今お話した区別や差別をしないものの見方です。本校の、キリスト教を基盤とする生活の中で、それらを自分のものにしていって欲しいと考えています。
(中山)
具体的にはどのような取り組みをされていますか。
(石井先生)
まず、9月の始めに国際理解週間を設けて、海外でいろいろ働かれている、決して華々しくはないけれど、本当に役立つ仕事していらっしゃる方をお招きしてお話を伺い、その方のお話をきっかけに自分達で考えるようにしています。
(中山)
どのような方にお話を伺うのですか。
(石井先生)
今年(2002年)にはユニセフの事務所の広報官の方をお招きしました。この方は黒柳徹子さんなどが海外にいらっしゃって活動をされるときに、その準備をしたり付き添いをされたりする方でした。
(中山)
外国の方に直に接する機会を数多く持っていらっしゃる方のお話を伺うのですね。そのような方のお話は生徒の皆さんにも大きな影響を与えるでしょう。
(石井先生)
そうですね。お話がきっかけで、春休みのワークキャンプに参加した生徒たちがいました。
(中山)
それはどのような活動ですか。
(石井先生)
キリスト教の団体で、海外で医療協力を行うNGOの草分けのような組織があるのですが、そこの呼びかけでネパールの病院でお手伝いをするものでした。
決して学校が勧めたわけではありません。自発的な行動だから余計価値があると思います。
(中山)
そう思います。しかし、ネパールは衛生状態や日本からの交通の便があまり良くありませんね。ご家庭がよく許可をされたと感心します。
(石井先生)
確かにそう思います。ご家庭が協力的だったのです。「そんなところへ行っちゃダメだ」(笑)とはおっしゃらなかったようですね。
(中山)
それは素晴らしいことですね。向こうで生徒の皆さんはどのようなことをされたのですか。
(石井先生)
日本から出かけていらっしゃるお医者さんや看護婦さんのお手伝いをしたようです。
(川山先生)
最初の年は仕事のほとんどが病院のペンキ塗りだったようです。
(石井先生)
その後、生徒たちは文化祭で発表しました。ネパールをいろいろなもので紹介していましたね。文化祭の発表の中では最も生き生きしているように見えました。
(中山)
なるほど。そのような行動は日常のボランティア活動にもつながりますね。横浜共立ではボランティア活動を長く続けられていると伺っています。
(石井先生)
そうですね。
学校が呼びかけたわけではありませんが、ハンセン病の患者さんとの交流は長いと思います。戦後間もない昭和22年からです。現在では法律が改正されて患者さんに対する偏見がなくなりつつありますが、当時は全く違っていたはずですから長く続けていることは評価できるでしょうね。
(中山)
どのようなことをなさるのですか。
(石井先生)
多摩全生園に年2回訪問させていただいて園内見学や資料館の見学をします。また、そこのプロテスタントの教会のお世話で礼拝をしたり信者の患者さんと交流させていただいたりします。関係者の方をお招きして講演をしていただくこともあります。
(中山)
きっかけはどのようなことだったのでしょうか。
(石井先生)
園内の「望郷の丘」という小高い丘から故郷のことを思いながら遠くをご覧になっている患者さんのお気持ちが、新聞で紹介されたことだったようです。
(川山先生)
最初は神奈川出身の患者の方に神奈川新聞を毎日お送りしたのが始まりです。それが代々受け継がれ、次第に発展してきました。卒業してからも気にかけてくれる方もいますね。もう何十年にもなりますが、現在でも匿名で毎年お金をお送りくださっている方もいます。
(中山)
とても心温まるお話ですね。これだけ長く継承されるのは難しいことだと思います。
(石井先生)
多摩全生園に出かけた生徒たちが、礼拝の際などにみんなに話をします。すると下級生が「今度は私達が行こう」と思うようです。学校にいる講師からも参加希望が出てくるので、人から人へ受け継がれていきます。韓国の互恵園というハンセン病患者さんの施設にも義捐金をお送りしています。こちらにも機会があれば伺いたいと考えています。
「自由と謙遜という人間像を目指す」
(中山)
このような活動は国内外のネットワークが整っているキリスト教学校に特有なものだと思います。貴重な体験ができる機会が多いのが、キリスト教学校のとても良いところだと私どもは受験生や保護者に伝えています。ただ、最近は宗教色を嫌う保護者も多いように感じます。いかがお感じになりますか。
(石井先生)
私たちのようなキリスト教学校は当然キリスト教を基盤としていますが、教会ではありません。「初めに信仰ありき」という共同体ではありません。入学の条件にクリスチャンであることを設けたり、学校生活の中でクリスチャンにしようなどとは考えていません。
ただ、キリスト教を全く考えないで、進学状況が良いからとか、偏差値が高いからとかだけで選んで欲しくはありません。
(中山)
このことについては私どものサイトにも折々質問が寄せられます。説明会などでも保護者から質問があるのではないでしょうか。
(石井先生)
ええ。おそらくどのキリスト教学校でもそうでしょうが、どうしてキリスト教を基盤にしているのか、なぜ礼拝や聖書の時間があるのかという質問があります。その時は会場内に緊張が走るのですよ(笑)。
(中山)
その時はどのようにお答えになるのですか。
(石井先生)
キリスト教の教育をすると、どのような子供ができるのか、どのような人間になるのかというお話をします。
(中山)
難しいお話ですね。どう話されるのでしょう。
(石井先生)
まず、「自由な人間」ということを話します。
最近の横浜共立はこんなことを言うのか(笑)と思われるかもしれませんね。
お話している「自由な人間」とは自分自身や社会の価値観や他人からの圧力に負けない人間のことです。
(中山)
確かにその通りだと思います。詳しくお話ください。
(石井先生)
何も根拠のないところには自由はありません。根拠をキリスト教的な価値観において生活することができるのがキリスト教的な自由ですね。横浜共立に入るとこの自由な人間ができます。
乱暴で他人がどうなっても良いと考える人間ではなく、人と物を大切にする人間を育てていきたいと思っています。
(中山)
それは大切なことですね。日常ではどんなことに表れるのでしょう。
(石井先生)
日常で言えば、そのような人間は挨拶がきちんとできます。不自由な人間には挨拶ができません。嫌いな人間に対しては全くできません。まず、誰にも分け隔てなく挨拶ができる人間にしたい。
また、自由と表裏一体で謙遜という態度も生まれてくるでしょう。学問に対しても他人に対してもそのような態度が持てる人間にしたいと考えます。
(中山)
それが横浜共立の教育の基になる考え方なのですね。
(石井先生)
ええ。先ほど国際化に対応できる人間という話をしましたが、それはこのような人間なのではないでしょうか。カトリックの方なのですが、犬飼道子さんや緒方貞子さんを想像していただければ良いでしょう。
横浜共立が目指すこの「自由と謙遜」という人間像を保護者の皆さんにわかっていただければ良いと思います。
(中山)
自由と謙遜という言葉に重い意味を感じます。
(石井先生)
ですから、キリスト教を毛嫌いする方でない限りは心配ないでしょう。
(中山)
只今伺いました横浜共立の教育について、今後もいろいろな場で伝えていきたいと思います。
学校での取り組みに加えて、家庭での教育も重要だろうと考えます。ところが、昨今の社会情勢の中で家庭での教育がどんどん難しくなっているのが現状だと思います。さてどうしたらよいものかと悩んでいる大人も多くいるように思います。いかがでしょう。
(石井先生)
そうですね。我が家でも娘を2人育ててきましたが、難しい面を感じます。
(中山)
親の言うことには何も反応しないとか、引きこもりの状態に陥ってしまったとか、何を考えているのか分からないなど、保護者からの受験相談の中でもかなりの数になります。家庭での困惑が大きくなっている気配を感じます。そのような方々にメッセージをいただけますか。
(石井先生)
基本的には家庭でその子の良いところも悪いところもみな受け容れてやることが必要だろうと思います。大概は親から見て良い子ならば安心します。悪い子ならば良くしようと考えますが、それは親が自分の心配を減らしたいからしていることなのです。
(中山)
確かにそうですね。
(石井先生)
それは親のエゴだと思います。子どもはそれが見えたら、内に引きもこるか、外に向かって爆発するほかないのです。どの子どもも「自分が受け容れられている」という安心感を持てることが大切です。
(中山)
他の学校の先生からも、自分たちの考えを押し付けてはならないとか、まず子どもの様子をよく観察することが必要だというお話を伺いました。そのお話とも通じますね。
(石井先生)
そうですね。親のために子どもが存在すると思わせる「良い子主義」の押し付けはだめですよ。良い子主義は必ず毀れてしまいます。そうでない現実を自分が見つめようとしたとき、周りがそれを認めなかったら人は毀れてしまうのです。これはとても辛いことです。
(中山)
ある時期まではとても良い子で親の期待通りに育ってきた子が、20歳を過ぎてから誰とも会話ができないという状況になったなどという話が最近多く聞かれるように思います。親子ともどもとても辛いことだと思います。
(石井先生)
その状況は誰にだって起こる可能性があります。「ウチの子に限って」はありえません。
(中山)
ある時期には良い子に向かって頑張るのは必要だと思いますが、バランスを欠いてしまうのでしょうね。
(石井先生)
最初から最後まで良い子主義で通そうとしないで、良い子主義の良いところも悪いところも知っている人間を育てていかなくてはなりません。家庭も学校もその点を理解していかなくてはなりません。勉強だけを取り上げても能力や適性によって違いが出るものです。全員が同じようにはいかないはずですから。
(中山)
横浜共立でも何か具体的な対応をされているのでしょうか。
(石井先生)
私のところにも生徒がよく話に来ます。それでも不十分なこともありますので、カウンセラーが常駐しています。これも長い歴史があるように聞いています。
(川山先生)
心の問題についての取り組みはとても早い方だと思います。もうずいぶん以前からカウンセラーはいます。
(石井先生)
カウンセラーも良くしてくれて、金曜以外は朝から夕方までいてくれます。
「これからの時代にあった日本語に再構築する必要がある」
(中山)
授業を持たれている中で、生徒の様子で気になる点はございませんか。
(石井先生)
横浜共立の生徒に限ったことではありませんが、他人の話や自分の考えをまとめあげる統合力が足りないように思います。統合力がないと知識のままで留まって教養には発展していかないと思います。
(中山)
なるほどそうですね。それは言葉の量や表現する力が不足していることに関係があるのでしょうか。
(石井先生)
そう思いますね。ボキャブラリーがとても足りないと思います。最近の言葉は表現がストレートで、しかもみんな同じ言葉しか遣いませんね。テレビで人気がある誰かが遣い始めると流行語になります。「超なんとか」や「やばい」とかいうような下品な表現はもういい加減に遣わなくなって欲しい(苦笑)と思いますね。
(川山先生)
中1の担任が苦労するのがそこですね。入学当初には聞くに堪えない話し方や言葉遣いの生徒もいますよ(苦笑)。
(中山)
横浜共立でもそうなのですか。
(川山先生)
はい(苦笑)。でも夏休みくらいまでの間に、横浜共立生らしい言葉遣いにしていきます。問題があったらその場で言い直しをさせます。これは高校生になってもあります。家庭で遣っているのでそれが出てくるようです。相手に正しく自分の意志を伝える力が大切ですから。繰り返し指導します。
(石井先生)
保護者に限らず社会全体で大人もボキャブラリーが不足していますから、家庭や小学校ではなかなか身につかないですね。
(中山)
小さい頃からきちんとした言葉遣いを教えることが、大人にできにくくなったのでしょうか。
(石井先生)
挨拶や言葉遣いなどの躾について、横浜共立はどのように取り組んでいるのかいう質問がよくあります。が、何を正しいと考えて躾るのか問題があります。
(中山)
そうですね。石井先生は何を正しいと考えて躾たら良いとお考えでしょうか。
(石井先生)
言葉の躾に関していえば、長い間日本は男性優位の社会が続いてきて、それに合わせて子どもを躾てきました。ちょっと大げさに言えばこれからの時代にあった日本語に再構築する必要があるでしょう。
(中山)
日本語の再構築というのは壮大なご意見ですね。
(石井先生)
言葉は文化であり、人間観そのものだと思います。言葉の水準が下がると文化の水準が下がってしまいます。言葉のレベルを上げて、その中から選択してより良い新しい日本語をつくっていきたいものです。
(中山)
言葉のレベルを上げるには、日常ではどのようなことが必要だと思われますか。
(石井先生)
やはり読書でしょうね。古い本ですが「読書の伴侶」というキリスト教に関係する文学者、政治家、経済人などの座談会の記録があります。その巻末に推薦書が載っているのです。今の時代で考えても実に良い本ばかりなのです。高3の授業で「読んだ本には印をつけて返しなさい」と言おうと思っているのですが、残念ですがおそらくほとんど知らないでしょう。
(中山)
読書の量はかなり落ちていると思います。
私どものメールマガジンでもいろいろな書物を紹介しています。入試がきっかけでもよい、読書量が増えて欲しいと切望しているからです。
(石井先生)
それはよいことです。でも大人も本を読まなくなりましたね。電車の中で漫画を読んでいる大人を見かけると「そんなのばかり読んでいて、どんな話題で会話するのだろう」と思ってしまいます(苦笑)。でも、最近はハリーポッターのシリーズを抱えて読んでいる子どもをよく見かけます。あれほど厚い本を読む機会を最近なかなか持てなかった中で、あれは良いですね。
(中山)
ハリーポッターの本は私どもの生徒たちも熱心に読んでいます。低学年生では登場人物のとても長い名前を覚えようと頑張って言い合いっこをしたりして楽しんでいるのを見かけます。
(石井先生)
長い書物を読み終えた満足感、充実感は素晴らしいものです。読書と同時に漢字を書くことが大切でしょう。私たちは小学校低学年時代から漢字を毎日100字も書いたものです。やらないと残されるからやることから始まりましたが。
(中山)
それは大事なことだと思いますね。私どもでも「漢字マラソン」と称して2000字~4000字というゴールを決めて長い休みなどに取り組ませます。小学3・4年は頑張りますが、高学年になるほどやる前から彼らの言葉のままでいえば「カッタルイ」などと言うのでとても残念です。
(石井先生)
年齢的なものもあるでしょう。そうしたことは早い方が良いと思います。最初は仕方なしでも次第にいろいろな意味を知って楽しくなります。
(中山)
私は最近の生徒たちに聴く力が不足しているように感じます。話の大部分の内容を聞き流してしまう場合が多いように思い大層心配になりますがいかがでしょう。
(石井先生)
聞き流してしまうのは話の内容を理解できるほどの語彙がないことだけではなくて、また聴くことができるという安心感があるからです。子ども達に限らず誰も明日があると思って生きていますからね。この人の話は今日が最後だという緊張感がなければ漏らさず聴くことなどできないでしょう。
(中山)
相手が緊張感をもって聴くことができる話をするためにはどのような方法があるとお考えでしょうか。石井先生は牧師さんでいらっしゃいますのであえてお尋ねいたします。どうか伝授してください(笑)。
(石井先生)
そうですね。今日はこの人のために話そうと決めることだと思います。
私がここで話すときは、全校で1000名以上の生徒がいますから、必ずしも全員に向く話ではないことがあります。そうした場合、ある一人の生徒のためにしたという話があっても良いだろうと思いますね。
(中山)
なるほど。
(石井先生)
その点では、話を聞くのが好きな生徒というのは得ですね。「まず聞いてみよう。判断はそれからだ」という姿勢を持っている生徒は良いですね。話した人間は「また話をしよう」と思いますよ。
(中山)
横浜共立の生徒の皆さんはいかかですか。
(石井先生)
上手だと思います。いろいろな方からお褒めをいただきます。しっかり話を聴いてくれて嬉しかったと感謝状まで頂戴することもあります。
(中山)
熱心に聴く生徒の皆さんが多ればお話くださる人にも満足していただけますね。
(石井先生)
少し話がそれますが、私は学校の格というか、力量というか、そういうものはどのような方をお呼びすることができるかで決まると思っています。生徒の聞き方が良ければ、また来ようと思っていただくことや、他の人にあそこの生徒は聞き方が上手だと紹介していただくこともあるでしょう。こちらも今度はこのような方をお呼びしようと思うでしょう。いろいろなキリスト教の学校を経てきた中で、うまく聴くことができる生徒は学校にとって宝物なのだと感じます。
(中山)
全く同感です。
「進学実績の伸びは当たり前の指導をきちんとした結果である」
(中山)
教科指導と入試についてお伺いします。
(石井先生)
そちらは川山教頭が専門なので任せましょう。何でも聞いてください(笑)。
(中山)
最近、特に進学実績の伸びが注目されていますが、何か新しい取り組みをされているのですか。
(川山先生)
実際のところ変えたところは何もありません(笑)。各教科で長い伝統の中で研究を繰り返してきた教科指導が効果を上げているのだろうと考えています。
(中山)
それではこの成果は何が原因でしょうか。
(川山先生)
他の学校の指導のレベルが下がってきているのでないでしょうか。相対的に本校が伸びてきたのかもしれませんね。
(中山)
以前から横浜共立生の英語はすごいというお話を聞きます。他の教科もどんどん力がついてきている印象があります。
(川山先生)
確かに英語は強いと思います。大学入試で得点源にしている生徒も数多いですね。模試で成績優秀者として名前が出る生徒が増えていますから後輩も頑張ればそのくらいにはなるんだと思ってくれます。
(中山)
前回の取材の折には川山先生は白衣でいらっしゃいましたので、理科がご専門だと思います。
新しい指導要領になって、小・中・高の各段階で理科の指導内容のギャップがさらに拡大したように感じます。指導面での対応はいかがですか。
(川山先生)
確かにそうですね。理科に本格的に取り組むようになるのが遅くなって、中1で教科書内容を理解するのに苦労する場合もあります。用語の理解や実験などに時間を割いて取り組んでいます。
(中山)
指導要領の変更以外にも種々の理由があり公立中・高では、理科の指導が上手くいかない状況が窺えます。理科系を志望する場合には、本当に限られた私学に進む以外にない状況になっているように思います。
(川山先生)
そうですね。最近、特に理系に進む生徒が増えています。私は化学の担当なのですが、以前に使っていた実験室に生徒が収容できなくなって一般教室で実験をするようになりました。
(中山)
やはりそうでしたか。医学部の志望者も増えているのでしょうね。
(川山先生)
医学部の志望者はとても増えています。調査書に印を押すのですが、今日押したものでは10人中3、4人は受験予定が医学部でした。
(中山)
それではカリキュラム上でも配慮が必要になりますね。
(川山先生)
国立大学への志望者が増えています。それに対応する必要もあるので、来年度(2003年度)からカリキュラムを大幅に変更する予定です。
(中山)
今後の取り組みとして、他に何かございますか。
(川山先生)
情報の授業を始めます。すでにパソコンや周辺機器の手配をしています。自由に使えるパソコンを中・高に数台ずつとパソコンの教室には人数分を配備する予定です。デジカメなどの機器も同時に購入するので今後いろいろな使い方ができるでしょう。
(中山)
生徒が学校のホームページを製作する予定などもあるのですか。
(川山先生)
今は学校のホームページを私が一人で製作しています。他の教師は授業で忙しいので必然的に私がやることになりました(笑)。その中に生徒が作った内容が入るかもしれません。
(中山)
学校によっては生徒のみなさんが製作したホームページもありますね。
(川山先生)
本校ではどうなるか決まってはいません。ただ、公開するかどうかは別にしても作品として製作するだろうと思います。
(中山)
生徒たちがパソコンを駆使することは当然のことになリつつありますからね。
成果を期待しています。
入試問題についてお伺いします。最近、形式を変えずに問題を易しくされた印象があります。この方針はお続けになるのでしょうか。
(川山先生)
本校の入試問題は取り付きにくいという印象があるという指摘がされてきました。本校らしさを残しながらもう少し得点しやすい問題ができないかと考えました。塾の先生方の意見も聞いて表現方法を変えるだけでもずいぶん違うだろうと考え、各教科に受験生の平均点が6割程度になるようにと指令を出しました。
(中山)
それが最近の問題だったのですね。
(川山先生)
はい。結果データから見る限りは目標通りだったので当面変える予定はありません。ただ、小学校の指導内容を考えるとどんどん作問しにくくなっていますね。が、私の専門の理科で言えば、自然をどのように観ているかという点で、小学生の言葉で問える範囲を出すという方針は変わらないでしょう。
(中山)
わかりました。今まで通りの勉強をすると良いということですね。
最後に横浜共立に入りたいと思っている受験生の諸君にメッセージをお話ください。
(石井先生)
聖ステパノ学園(注:大磯にある戦災孤児施設エリザベス・サンダースホームを運営していた学園、立教学院・立教女学院などと同じく聖公会に属する)の小川校長先生が、英国の立教学院にいらっしゃったころに「良い学校の生徒はきちんとした服装をして背筋のピシッと伸びた生徒」だと向こうの方から言われたそうです。
小川先生が生徒にお話くださった時に、本校の生徒の背筋がピシッと伸びていて清々しく思われましたとおっしゃってくださいました。
(中山)
美しい姿勢ですね。
(石井先生)
ここに掛かっている第4代校長ルーミスの写真を見てください。背筋がピンとしているでしょう。横浜共立を志望する生徒諸君には、あのようになりたいと思って欲しいですね。
私の好きな言葉に「凛とした女性」というのがあります。横浜共立の生徒にはぜひそうなってほしいと思います。
(中山)
本当にそう思います。凛とした女性が増えれば日本の文化も一層厚み深みが増しますね。
(石井先生)
ええ。女性には頑張って欲しいと思います。
でも、男性社会にカウンターパンチを見まうような女性主義ではだめです。底が浅いものはつながりません。男性とか女性とかの次元ではなく、評価される人物。先にあげました、緒方貞子さんのような人になってほしいと思いますね。
それを目指して女子教育を進めていきます。
以上
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